信州そばは宅配便で配達してくれるので家庭にいながらにしてそばを楽しむことができる。だが、信州そばの楽しみ方はそれだけではない。都会では蒸し暑い夏の盛りに山間のそば栽培畑を訪れるのも一つの趣向である。都会とは違ってそば畑を通っていく風の気持ちよいこと。清涼感満天の土地で育ったそばは確かに爽やかさを知っている。その花の愛らしさと清潔感もいい。おしゃれな人の着物の裏地のようにそばの根元の茎が成長するに連れて赤色を増していく。
そばの奥の深さの一端を語っているようだ。
近年、様々なコミュニティーで「男の料理教室」が開かれていて、その中にそば打ちを学ぶ教室もあちこちであるらしい。わが町でもそば打ち教室があり、私も参加したことがある。子ども時代の無心に遊んだ充実感を思い出しなんとも満たされた時間を味わった。男性がコミュニティーにとけ込んでいくきっかけになる。一軒置いて隣りの人も参加していて、はじめて親しい会話をした。そば打ちの仲間で信州そばをめぐる旅をしたこともあった。
心身ともに満足の旅だった。
ご当地の食べ物は、実際に出かけて過程を体験することを勧めたい。味だけでなく料理のうまさの秘訣が、他でもない作物が育つ地域の人柄やコミュニティーの活発な交わりにあることを知ることができる。都会のレストランでは産地から直接農作物を購入して、生産者の顔が見えるおつきあいをしているところがある。もっともなことだ。信州そばがおいしさの究極の秘訣を教えてくれた。